ぜひ知っておきたい保険料の減免制度(障害年金申請業務に関する雑感)(2026.8.19)
(年金制度の目的は、稼得能力の喪失に対する所得補償) 年金制度は、稼得能力を喪失した人に対して一定の所得補償を行うことでその生活を支えることを目的とした公的制度になります。 まずは、だれもが知っている「老齢年金」ですが、定年退職等により稼得能力の喪失がはじまる原則65歳から生涯にわたって受け取れる老後のための年金になります。 関連して、一家の働き手や年金加入者が亡くなった時(これも稼得能力の喪失に当たります)、その遺族(生計維持要件や収入要件あり)が受け取れるのが「遺族年金」になります。 そして「障害年金」ですが、病気やけがで日常生活や仕事が制限されるようになった場合、その生活の安定を図るため、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です 現役時にけがや病気などで障害状態になることで、通常、加齢に伴って生じる稼得能力の喪失という事象が早期に到来してしまった場合でも、一定の所得補償を行うことで生活支援の一助となすことを目的としています。 わたくしたちの多くは、自己の働く能力(労働力)を活かして、企業から雇用され、自ら起業するなどして日々の糧を得ているといえます。加齢のほかにも、病気やけがなどの不測の事態により、いつ稼得能力を失う状況になってもおかしくありません。 年金制度は、私たちが安心・安全な社会生活を行う上で欠くことができない国家の保障に裏打ちされた優れた保険制度(セーフティネット)といえます。 私は、保健・福祉専門の社会保険労務士として、障害年金の代理請求業務も行っております。開業してまだ2か月のため社労士としての経験値が高いわけではありませんが、これまで個人や患者団体様からのご相談や、前職の県職員時代における生活保護や障害者支援施設などの福祉現場に携わってきた経験を踏まえ、障害年金申請に関して感じていることについて、具体的な申請手続の説明とともにお話をさせていただきます。 障害年金の請求に関し、わたくしたち社労士が最初に確認させていただくことは、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師等の診療を受けた日(これを初診日といいます)の特定になります。そして、ご依頼人様が、この初診日の時点において、国民年金の加入期間にある場合には障害基礎年金が、会社等に勤務して厚生年金保険の被保険者としての加入期間にある場合には障害厚生年金の請求が可能になります。 初診日が確認できると、次の段階として、当該医療機関に対して(初診日の)「受診状況証明書」の作成を依頼する運びとなります。 しかしながら、この初診日の確認がなかなか困難であり、初診日が過去に遡る場合、カルテがないということや(原則保管期間は5年とされています)、廃院になってしまっていたなどといった事例がよくあります。 このような場合には、次に受診した医療機関を探して改めて作成依頼を行うことや、当時の事情を知る医療関係者や知人など第三者から証明書を取得する、或いは、発行日や診察科目が確認できる当時の診察券や領収書等の有無の確認など、様々な挙証資料を用意して受診事実を証明する必要があります(注:この証明の可否如何で社労士の技量が問われるといったことにもなりますが、今回のテーマの本筋ではないことから詳細は割愛させていただきます)。 さて、「受診状況証明書」が取得できたとしても、さらなる受給要件として、保険料の納付要件を満たしているか確認することが必要になります。 具体には、「初診日の前日において、初診日がある月の2か月前までの被保険者期間に、保険料の納付済機関と免除期間を合わせた期間が3分の2以上あること」(3分の2要件)が基本になります。ただし、この3分2要件をクリアできない場合でも、初診日が令和18年3月末日までにあるときは、「初診日の前日において、初診日がある月の2か月前までの直近1年間に保険料の未納期間がないこと」(直近1年要件)とする特例要件も用意されています。※20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は不要になります(いわゆる20歳前傷病の初診日要件) 障害年金を受給される方のうち精神や知的障害を理由として受給している方はおよそ7割に及ぶといわれています。 その精神の障害についてですが、制度上、次の5区分に区分されています。 ① 「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想型障害」並びに「気分(感情)障害」 ② 「症状性を含む器質性精神障害」(注:頭部外傷など器質障害を原因とする) このうち、通常低年齢で発症する疾患といわれる、④の「知的障害」と、⑤の「発達障害」に関する障害をお持ちの当事者に関して、特に障害年金に関する課題が存在しているものと感じています。 このうち、通常低年齢で発症する疾患といわれる、④の「知的障害」と、⑤の「発達障害」に関する障害をお持ちの当事者に関して、障害年金に関する課題が存在しているものと感じています。 例えば、就労継続支援作業所などにおいて、障害年金2級を受給されている方と同一の障害若しくはさらに重い状態と傍目でも感じられるにもかかわらず、障害年金を受給していない方がいるといった事例がよく見受けられます。 受給していない理由について確認すると、ご本人や保護者の方が障害年金制度に関しての理解が十分ではないことが往々にしてあります。また、やはり成育環境によっては周囲の方々からの助言や支援が得られないまま今日に至ってしまっているといった事例や、年金申請を行ってみたものの、市役所や年金事務所の窓口担当者の説明の内容が複雑でよくわからないまま頓挫してしまったという事例も多いようです。また、生活環境によっては、周囲の方々からの助言や支援が得られないまま今日に至ってしまっているといった事例や、年金申請を行ってはみたものの、市役所や年金事務所の窓口担当者の説明の内容が複雑でよくわからないまま頓挫してしまったという事例も多いようです。(※年金事務所の窓口の対応の不親切さについては、国の社会保障審議会年金管理部会でも問題視され、厚労省年金局から「お客様の視点に立って懇切丁寧に相談事務を行うよう」文書発出されています。)。 これらは、障害者を取り巻く環境が未だ十分ではないということの証左でもあり、課題の一つといえると思います。 そして、もう一つの大きな課題が、保険料の未納という問題です。 未納しているのだから、年金受給ができないのは当然のことではないかといってしまえばそれまではありますが、当事者ひとり一人の事情を考慮すれば、必ずしも一刀両断に切り捨てる問題ともいえないのではないかと感じております。 私が関係したご依頼人様がいずれも保険料の未納の問題を抱えておりました。 いずれも、知的障害や発達障害を抱えるために、就労先が見つからない、せっかく就労できても職場になじめない等により退職せざる負えない状況により、保険料の納付ができなかったという経済的な事情になります。 また、世帯全体でみても、そもそも納付する余裕がないという事例もありました。 一方、ある世帯主の方は、経済的に余裕がないことが理由でもありますが、年金制度は将来破綻するから、という根拠のない自己判断で保険料の納付を放擲したりしておりました。 実は、制度上の取扱いとして、被保険者の経済的な事情等に応じ、保険料に関する減免制度が設けられています。 個人負担分の保険料がゼロになる全額免除制度から、保険料の4分の3、半額免除、さらに4分の1免除など、前年の所得に応じて段階的に減額されていく制度になります。 例えば、単身世帯の場合、前年所得が57万円(給与収入ベースでは122万円。ここから、給与所得控除65万円を差し引いて57万円になる)以下の場合は保険料が全額免除されることになります。)以下の場合は全額免除とされます。(※なお、国民年金の場合は、法律上、世帯主は世帯に属する国民年金第1号被保険者の保険料を納める連帯納付義務を負うため、単身世帯でない場合は、世帯主の所得要件も57万円以下でないと全額免除とはされませんのでご留意ください)。(保険料減免制度の理解不足の問題=未納とは全く性格が異なる) 保険料の減免制度に関してですが、私が関わったケースでは、この制度を正しく理解されている方はほぼ皆無でした。 さらに、これも重要なことなのですが、保険料の減免申請手続き行うことで、保険料の納付済期間に加え、保険料免除期間も合わせた期間をもって、障害年金の保険料納付要件(3分の2以上要件)に換算することができるというメリットがあることが理解されていないということです。減免制度を理解していないために、未納のまま放置されてしまうことで、結果的に、障害年金の受給ができないことになっている事例がかなり多いと思われます。 このことは、知識の欠落という理由により、当事者に対して非常に大きな不利益を担わせているわけですが、障害というハンデを抱える当事者の方々に対しては、より丁寧な広報や周知が必要であり、少なくとも私が関わってきた関係の方すべてが認識していなかったという事実を鑑みると、果たして広報が十分であったといえるのかあらためて考えさせられるところです。 (国民年金の保険料の半分は国の税金から支払われている) 厚生年金の保険料は、事業主が2分の1を支払うことになっていますが、実は、国民年金の保険料についても2分の1相当が国の税金から支払われている制度設計になっています。 このため、経済的な理由等により保険料の全額免除手続を行い、例えば20歳から60歳のすべての期間で保険料を負担できなかったとしても、2分の1相当分は税金により保険料を支払ってきたこととなり、65歳時点でこの税金に見合う給付分である2分の1相当の年金(老齢基礎年金。満額70,608円(R8)のため、半額分は35,304円)を受給することが可能になるわけです。(それぞれの減免割合に応じた受給相当額は以下のとおり) 全額免除の場合の年金受給額 4/8相当【本人負担なし+国:半額4/8負担】 4分の3免除の場合 〃 5/8相当【本人1/4負担+国:半額4/8負担】 半額免除 〃 6/8相当【本人2/4負担+国:半額4/8負担】 4分の1免除 〃 7/8相当【本人3/4負担+国:半額4/8負担】 一方、同じ経済状況であっても、この免除制度を知らないばかりに手続ができなかったという場合、そもそも制度の恩恵を受けられないということになってしまいます。 保険料未納者に対しては、年金事務所から定期的に催告状が郵送されておりますが、実際には開封されないままで放置されている事例も多いようです。 前に、そのような状況をたまたま目の当たりにしたことがあったとき、なぜ開封しないのか家族の方に尋ねてみると、「そもそも払える経済状況にはないからそのままにしている」との答えでした。 国や年金事務所では、催告状の中に免除制度についてのリーフレットを同封することや、民間委託業者による電話や戸別訪問を実施しています。 しかしながら、いまだ保険料の未納者は72万人(令和6年度末)にも及んでいるようです。おそらく、この72万人の方の中には、減免制度を承知しないままという方も多数含まれているものと推察します。 年金制度の簡単な仕組みや、保険料の減免制度など、有益と思われる情報については、早い段階から周知徹底を図るべきではないかと考えるところです。 特に、特別支援学校に通われている児童・生徒さんに対しては、障害者支援制度に対する理解や活用できる様々な社会資源の紹介とともに、障害年金などの年金制度に関するもう一歩踏み込んだ広報活動を行う必要があるものと感じています。 長々と書いてしまいましたが、障害者ご自身やその保護者及び関係者の皆様方に、この年金制度における保険料の減免制度を、広く知っていただくことで、正しい手続きが行われるとともに、年金の漏給が少しでもなくなるよう願ってやみません。 ※なお、余談ですが、わたくしは社労士の開業に当たり、最初に地元の特別支援学校のPTA事務局 に対し、卒業予定の生徒さんや保護者の方を対象として、障害年金制度の概要に関する説明会や 相談会でのお手伝いをしたい旨の案内を発出させていただいたところではありますが、いまだ回
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