10月1日からの同一労働同一賃金ガイドライン等の改正施行にあわせた賃金規程等の点検・見直しのおすすめ②(2026.7.22)

〇今回は、ガイドラインの具体的な改正内容の説明になります


①賞与について(※長澤運輸事件(最二小判平30.6.1)判決を踏まえて追記されました)


【改正前】 ガイドライン記載内容  


「会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給するものについて、通常の労働者と同一の貢献である短時間・有期雇用労働者には、貢献に応じた部分につき、通常の労働者と同一の賞与を支給しなければならない。また、貢献に一定の相違がある合においては、その相違に応じた賞与を支給しなければならない」


⇒会社の業績に対する貢献に応じた支給ということが明記されていました     


【改正後】 ガイドライン記載内容(以下のとおり内容が追記されました) 


「賞与については、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的として、・・・・・労務の対価の後払い、功労報償、生活費の補助、労働者の労働意欲の向上等の様々な性質及び目的が含まれるが・・・短時間・有期雇用労働者にも当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的が妥当するにもかかわらず・・・相違に応じた均衡のとれた内容の賞与を支給せず、かつ、その見合いとして、労使交渉を経て・・・基本給を高く支給している等の事情もない場合・・・当該賞与の相違は不合理と認められるものに当たりうる」


⇒賞与の性質・目的に関する具体の内容が例示列挙されました さらに、正社員の賞与の性質・目的等を整理・検討した上で、その性質・目的に照らして、パートタイム・有期雇用労働者にも妥当する場合であるにもかかわらず応分の賞与を支給しない場合や、賞与を支給しない代わりに賞与見合分を基本給で上乗せ支給するといった事情もない場合には、不合理と認められることになる旨明記されました


【改正を踏まえて行うべき対応】


〇賞与に限らず他の手当の支給についても共通ですが、今回の改正では、正社員とパート・有期雇用労働者の待遇差については、個々の待遇ごとに、その性質及び目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されること、加えて、主観的抽象的な説明では足りず、客観的かつ具体的な実態に照らして対応することが求められることになります


〇今回の改正では、賞与の性質・目的等が具体に列挙されましたので、事業主は、自社の賞与の性質・目的を整理し、パート・有期雇用労働者にも妥当する場合には、その待遇差の合理性の検証を実施した上で、待遇差に応じたバランスのとれた賞与を支給することが求められることになります


〇また、賞与の支給の代替措置として、賞与支給に見合った分について、基本給の上乗せ(プレミアム)支給という方法も取り入れることも可能であるとされます



②退職手当について(※メトロコマース事件(最三小判R2.10.13)判決を踏まえて新設)


【改正前】 ガイドラインに特段の記載はありませんでした  


【改正後】 ガイドライン記載内容(今回以下のとおり内容が新設されました) 


「退職手当については、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的として、労務の対価の後払い、功労報償等の様々な性質及び目的が含まれるが・・・短時間・有期雇用労働者にも当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的が妥当するにもかかわらず・・相違に応じた均衡のとれた内容の退職手当を支給せず、かつ、その見合いとして、労使交渉を経て・・・基本給を高く支給している等の事情もない場合・・当該退職手当の相違は不合理と認められるものに当たりうる 」


⇒賞与の追記内容とほぼ同趣旨になります(異なる点としては、退職手当の性質及び目的に関する具体の列挙が労務対価の後払いと功労報償等のみとなっていること)

正社員の退職手当の性質・目的等を整理・検討した上で、その性質・目的に照らして、パートタイム・有期雇用労働者にも妥当する場合であるにもかかわらず応分の退職手当を支給しない場合や、退職手当を支給しない代わりに見合分を基本給で上乗せ支給するといった事情もない場合には、不合理と認められることになる旨明記されました         


【改正を踏まえて行うべき対応】※賞与と同様の対応になります


〇事業主は、自社の退職手当の性質・目的を整理し、パート・有期雇用労働者にも妥当する場合にはその待遇差の合理性の検証を実施し、待遇差に応じたバランスのとれた退職手当を支給することが求められます


〇また、退職手当の支給に替えた代替措置として、手当支給に見合った分について、あらかじめ基本給の上乗せ(プレミアム)支給を行う方法を取り入れることも可能です


 

③家族手当について(※日本郵便大阪事件(最一小判R2.10.15)判決を踏まえて新設されました)


【改正前】 ガイドラインに記載はありませんでした  


【改正後】 ガイドライン記載内容(今回以下のとおり内容が新設されました) 


「労働契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の家族手当を支給しなければならない」


【改正を踏まえて行うべき対応】


〇文面のとおりの対応が求められます


〇「相応に継続的な勤務が見込まれる」期間については、特に定められておりませんが、無期雇用転換制度の要件の5年が一定の目安と考えられています


 ④住宅手当について(※ハマキョウレックス事件判決を踏まえて新設されました)


【改正前】 ガイドラインに特段の記載はありませんでした  


【改正後】 ガイドライン記載内容(今回以下のとおり内容が新設されました) 


「住宅手当であって、転居を伴う配置の変更の有無に応じて支給されるものについて、通常の労働者と同一の転居を伴う配置の変更がある短時間・有期雇用労働者には、通常の労働者と同一の住宅手当を支給しなければならない」


「住宅手当であって、転居を伴う配置の有無にかかわらず支給されるものについても・・当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならないことに留意すべきである 」


【改正を踏まえて行うべき対応】


〇上段「 」部分は、文面のとおりの対応が求められます


〇下段「 」部分は、転勤がない正社員にも住宅手当を支給しているのであれば、転勤のない短時間・有期雇用労働者にも同様に支給することが求められています


⑤その他 【今回の改正を踏まえて対応すべき骨子のみ記載します】


ア 福利厚生施設


〇給食施設・休憩室・更衣室については同様の利用を認めることに加え、福利厚生施設の利用料金・割引率等の条件についても不合理な差を設けてはならない


イ 病気休職(日本郵便東京事件最高裁判決を踏まえて追記)


〇病気休職期間に係る給与保障を行う場合は、契約の更新を繰り返している等、相応に継続的な勤務が見込まれる場合は、同一の給与の保障を行わなければならない(※相応の継続勤務=5年が一定の目安)


ウ 夏季・冬季休暇(日本郵便佐賀事件最高裁判決を踏まえて追記)


〇短時間・有期雇用労働者についても、通常の労働者と同一の夏季・冬季休暇を付与しなければならない


 《結び》


・国では、「同一労働同一賃金の実現」のさらなる推進を目的として、今般のガイドラインの改正により、正職員と非正規職員との均等・均衡待遇による格差是正の徹底を進めることとしています


・事業所における実務上の対応としては、今回の改正を契機として、「就業規則」「賃金規程」等における手当・賞与・退職金等の性質・目的について整理・検証を行った上で、「支給目的」等を追記するなどの見直しを行う必要があります


・すべての従業員が納得できる公平・透明な賃金制度は、組織に対するエンゲージメントの向上につながるとともに、人材の定着にも寄与、強いては企業の持続的な成長と採用力の強化にも直結するといえます(※採用力の強化に関しては、厚労省でも、「正社員とパート・有期雇用労働者との同一労働同一賃金に取り組んでいることをハローワークの求人票でアピールする」ことを喧伝しているところです)

・この機会に、事業主の皆様が、すべての従業員が安心して働き、能力を発揮できる、活力ある組織づくりを目指されることを願ってやみません

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